近年、NIPT(新型出生前診断)を受ける妊婦さんが増えています。
血液検査だけで胎児の染色体異常のリスクを調べられる手軽さから、「とりあえず受けてみよう」と考える方も多いでしょう。
しかし、一つ質問があります。
「もし”陽性”だったら、あなたはどうしますか?」
そんな問いに、今、答えられますか?
NIPTは”結果がすべて”の検査ではありません。
受ける前に知っておいてほしい、考えておいてほしいことがあります。
それは、検査の”その先”について。
結果を受け取った後、どのような選択肢があり、どんな心の準備が必要なのか。
【この記事で一緒に考えたい3つの問い】
✅この検査を「なぜ受けたいのか?」目的を明確にしているか?
✅もし陽性だったら、どこまでの医療的対応・選択肢を考えているか?
✅結果によって気持ちが揺れたとき、誰にどう相談するか想定できているか?
今回は、NIPTを検討中のご夫婦に向けて、検査後の流れや事前に話し合っておきたいポイントをお伝えします。
この記事を読み終えた時、あなたとパートナーは「NIPTを受けるかどうか」だけでなく、「受けた後のことまで」しっかりと話し合えるようになっているはずです。
漠然とした不安が、具体的な準備に変わり、お二人らしい選択をするための道筋が見えてくるでしょう。
NIPTを受けた後の流れを知っておこう

NIPTとは?
NIPT(Non-Invasive Prenatal Testing)とは、妊婦さんの血液中に含まれる胎児由来のDNA断片を解析することで、胎児の染色体異常のリスクを調べる検査です。
妊娠10週頃から受けることができ、主に21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、13トリソミーの3つの染色体異常について調べることができます。
従来の羊水検査とは異なり、採血のみで行える非侵襲的な検査のため、流産などのリスクがほとんどないとされています。
ただし、NIPTはあくまでも「スクリーニング検査」であり、陽性の場合は確定診断のための羊水検査などが必要になることを理解しておくことが大切です。
陽性だった場合の次のステップ
NIPTの結果が陽性だった場合、それは確定診断ではありません。
「リスクが高い」ということを示す非確定的検査のため、より詳しく調べるには確定診断が必要になります。
確定診断として一般的に行われるのが羊水検査です。
羊水検査は通常、妊娠16週以降に実施され、結果が出るまでに2〜3週間程度かかることが多いとされています。
つまり、NIPTで陽性だった場合、妊娠18〜20週頃まで確定的な結果がわからない状況が続くことになります。
この期間は、多くのご夫婦にとって非常に不安な日々となります。
陽性だったら、あなたはどの病院で羊水検査を受けますか?
その検査結果を、誰とどう受け止めるか想像できますか?
「陽性でも産む」と思っていたとしても、その後に出産・育児でどんな支援が必要か、情報は集まっていますか?
怖がらせるような言い方をしてしまい申し訳ありません。
しかし、検査結果の次には、「人生の選択」が待っている可能性があります。
医師とよく相談し、心の準備をしながら次のステップを検討することが大切です。
時間の経過とともに変わる選択肢
妊娠週数が進むにつれて、もし妊娠を継続しない判断をする場合の医療的対応も変化します。
妊娠12週以降に妊娠を継続しない選択をする場合、法的には「死産」として扱われ、死産届の提出や火葬手続きが必要になることがあります
また、身体的・精神的な負担もより大きくなることが知られています。
こうした現実を知った上で、
- どの時期にどのような選択肢があるのか
- それぞれにどのような対応が必要になるのか
について、事前に医師から十分な説明を受けることが重要です。
夫婦で事前に話し合っておいてよかったこと

価値観の共有から始める
多くのご夫婦が「話し合っておいてよかった」と振り返るのは、以下のようなテーマです。
①どんな結果でも迎える準備があるか
「もし染色体異常があっても産み育てていくのか」「それとも妊娠を継続しない選択をするのか」。これは非常にデリケートな問題ですが、検査を受ける前にお互いの気持ちを確認しておくことで、結果を受け取った時の混乱を軽減できます。
②情報を知ることの意味
「早期に知ることで、より良い出産準備や育児環境を整えたい」という考えもあれば、「知ることで余計な不安を抱えたくない」という考えもあります。お二人にとって検査を受ける目的は何なのか、改めて話し合ってみてください。
③検査後に気持ちが変わったとき、どう受け入れ合う?
事前の決意と実際の感情は変わることがあります。そんな時の心構えを共有しておきましょう。
④周囲(家族・親)には話す?どこまで共有する?
両親や家族への相談の仕方、職場での対応など、具体的な方針を決めておくと安心です。
筆者である私は、実際につらい選択を経験しましたが、このときのことは家族や職場にありのままに伝えていました。隠すようなことではないこと、お腹の中にいる子を知ってほしかったこと、みんなで共有することで起きた出来事を忘れないように大切にしていきたいと思ったからです。
ネガティブな感情も受け入れ合う
妊娠中はさまざまな感情が湧き上がります。
「不安」「恐れ」「迷い」といったネガティブな感情も、自然で正常な反応です。
お互いがそうした感情を正直に話せる関係性を築いておくことで、検査結果がどのようなものであっても、二人で支え合いながら次のステップを考えることができるでしょう。
「こんなことを考えてはいけない」と自分を責める必要はありません。
妊娠、出産は当たり前ではないからこそ、こういうことを考えるのは当然のことです。
不安や迷いを感じるのは、赤ちゃんのことを真剣に考えている証拠でもあるのです。
医療者との連携も大切に

検査を受ける際は、信頼できる医療機関を選び、十分なカウンセリングを受けることをお勧めします。
遺伝カウンセラーや臨床遺伝専門医などの専門家に相談することで、検査の意味や限界、結果の解釈について正確な情報を得ることができます。
また、検査後のサポート体制についても事前に確認しておくと安心です。
わからないことや不安なことがあれば、遠慮なく医師や専門家に質問してください。
納得いくまで説明を求めることは、あなたの権利でもあります。
さいごに──大切なのは”お二人らしい選択”

出生前診断について「正解」は一つではありません。
ご夫婦の価値観、生活環境、将来への考え方によって、最適な選択は変わります。
大切なのは、検査の”その先”も含めて十分に情報を得て、お二人が納得のいく選択をすることです。
たとえば、「もし陽性だったら産まない」と決めていたご夫婦が、実際に結果を受け取った時に「やっぱり産みたい」と気持ちが変わることもあります。
反対に「どんな結果でも産む」と思っていたのに、具体的な情報を知ったことで迷いが生じることも。
また、パートナー同士で意見が分かれるケースもあります。
検査前は同じ考えだったのに、結果を前にして「産みたい」「産まない方がいい」で意見が割れてしまう。
こうした時に、お互いの気持ちの変化を受け入れ合えるかどうかが重要になってきます。
さらに意外なのは、陰性(正常)の結果が出た時にも複雑な感情が生まれることです。
「安心した」と同時に、「検査を受けたこと自体に罪悪感を感じる」「もし陽性だったら産まなかったかもしれない自分が怖い」といった気持ちを抱く方もいらっしゃいます。
たからこそ、どのような結果になっても、「この選択は私たちが出した答えだ」と思えるような準備をしておくことが、後悔の少ない妊娠生活につながるでしょう。
この記事が、これからNIPTを検討されるご夫婦の参考になれば幸いです。
お二人が安心して話し合い、心穏やかに妊娠生活を送れることを心から願っています。
医療的な判断については、必ず専門の医師にご相談ください。
あなたとパートナー、そして赤ちゃんにとって最良の選択ができるよう、十分なサポートを受けながら検討を進めてくださいね。
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